NFTアートプロジェクト SYMBIOGENESIS を元にした“Web3サービスを企画するために“

「2023/6/29(木)」に開催したクローズドイベント「Web3.0 Business Initiative Lab | 2023/06」の株式会社スクウェア・エニックス ブロックチェーン・エンタテインメント事業部 プロデューサー 玉手 直之 様の講演を許可をいただき記事にいたしました。

NFTアートプロジェクト SYMBIOGENESIS」の概要、Web3プロジェクトを立ち上げるにあたって「アイディア」「企画」「マーケティング」など各フェーズで重要なこと、Web3時代のビジネスモデルから進むべき未来像をお話いただきました。

SYMBIOGENESIS は10,000体のキャラクターによる NFTアート、物語とゲームを複合した新たなエンターテイメントを目指しております。

数万体規模のNFTコレクティブアートは、AIなどの外部ツールでパーツを組み合わせて制作されることが多いですが、SYMBIOGENESISではキャラクターを物語にあわせて1つずつチェックしたかったため、パーツの組み合わせを手作業で行っております。この手作りの部分に非常に時間がかかり大変でした。

舞台となる浮遊大陸はグーグルマップのように細部まで拡大縮小することができます。非常に巨大で高解像度の一枚の静止画で表現されています。

物語は巨大な竜との戦いの先に「浮遊大陸の未来を決める」メインストーリーの他に、様々な短編物語を10,000体のキャラクターにちりばめています。例えば「竜との闘いの裏で行われている別の視点の物語」や浮遊大陸よりもはるか昔にいた「誰か」の記憶など、小説20冊分200万文字のボリュームで壮大な世界を構築しています。

ゲームは巨大な浮遊大陸に眠る様々なアイテムをヒントや物語を頼りに探していきます。アイテムを集めて行くとクエストストーリーが進み、様々な物語と繋がっていきます。それらを読み進めることで最後のワールドミッション(最後の選択)に到達します。

ワールドミッションは全世界のプレイヤーの方に参加いただけますが、その中で3人だけが最後の選択ができる参加型のマルチエンディングになっています。どのような選択をするかによってゲームの未来が決まる仕組みになっています。

次にSYMBIOGENESISをWeb3サービスとして企画するためにどのように検討や議論を行ってきたかをお話します。

アイデアフェーズについてお話します。

私たちのWeb3部門は去年の22年4月に立ち上がりました。私はそれまでゲームのマーケティングをやってきたのですが、Web3とはなんだろうと違いを考えるところからスタートしました。

私なりだした答えのひとつは価値をみんなで考えて決める。Web2は基本的にどのようなサービスであっても、中央集権的に価格も決まってます。一方でWeb3は、非中央集権的にそれはどのくらいの価値なのかをみんなで決め、それは常に変動するものだと考えます。

Web3ならではの面白さや体験とは何だ、Web2では出来なくWeb3では出来ることとは何だ、それは価値が可変的でみんなで決めること。リアルでも仮想空間でも同じような価値として考えられるところだと考えました。なので、仮想空間上の価値とリアル上での価値が同じとなれば、それはリアルとバーチャルの垣根を超えるあたらしい価値の創造になるのではと考えました。

メタバースというデジタル空間の世界というものが最近ありますが、バーチャルだけでなく、リアルな体験がバーチャルに影響して、バーチャルの体験がリアルに影響しあう。これがメタバースの理想の一つの形と考えております。

Web3の定義を私たちの中で決めた後に、今売られているNFTアートと差別化できないかというところで、私たちはゲームを作ろうという答えがすぐにでました。スクウェア・エニックスとしてゲームを作るからには当社の強味である物語をしっかり楽しめるようにしよう。と考えました。

最後にアイデアとしてひねり出したことは、10,000体のキャラクターを一つの絵に描くにはどのように表現するか悩みましたが、ヨーロッパの絵画とか関ヶ原の合戦の背景画とかも参考になりました。昔の絵画は多くのキャラクターが一つの絵に描かれている集合絵があり、それがワンシーンではなく、複数のシーンが合体しているものがありました。それを見て、これだ!これを作ろう、その一枚絵に描かれたキャラクターを一体一体NFTアートとしてはどうかと考えました。

次に企画フェーズについてお話します。

NFTアートを保有することで読める物語があるというユーティリティをつけたら面白いのではないか?と考えましたが、どのように作るのかの検討には苦労しました。

10,000体のキャラクターにどうやって物語をつけていくか(作れるのか?)、一体一体のキャラクターがそれぞれの物語をもつと、どのような遊びが出来るのか、どうしたら面白いのかといった検討を行いました。

情報はリアル/バーチャルでもオンライン/オフラインでも交換出来ますが、価値をリアル/バーチャルとオンライン/オフラインで移動するにはどうしたら良いかを考えました。物語という情報の価値はオンラインで交換しやすく、物語をバラバラにすることによって交換が必要になり、交換を通して情報と価値をリアルとバーチャルで行き来することが出来るのではと考えました。

その後、その中での体験できることとして考察が面白いのではと考えました。ワンピースなどの漫画やサスペンス系ドラマで考察系インフルエンサーが人気になっていると思いますが、考察動画を見ても楽しい、考察するのも楽しい、いろいろなところで情報交換がおこります。考察合戦になっています。それが情報の価値になっていく。これを体系化できればWeb3としてのチャレンジができるのではと企画を作りました。

前出のWeb3とはなんだろうといった問いのなかで、プラットフォーマーを目指すのか、プラットフォームはWeb3時代に必要なのかといった点は、中央集権・非中央集権の話とあわせてしっかりと議論しました。

AndroidとiPhoneのアプリとして提供する場合は、中央集権的にプラットフォームの規約に合わせたり、ルールに従う必要があります。一方でプラットフォームに乗せない場合は、非中央集権的になるが全部自分たちで決められる分、作らないといけないです。今回のプロジェクトに関しては、プラットフォームに載せないことにしました。

グローバルに配信する場合にはプラットフォームに載せたほうが流通経路など圧倒的に有利です。年齢レーティングや、世界中の法律や会計などいろいろな対応をしていくとしても、プラットフォームに乗せるというのはものすごく便利です。ですが、今回は非中央集権でやることを決めました。ここはノリに近い決め方でした。その分、社内といろいろなディスカッションをしました。

Web3の未来を中長期で考えた場合、人々の生活を便利にできるのか、楽しくなるのか、幸せにできるのか、など理念的な部分はものすごく重要だと考えています。

サービスを提供し長期的にビジネスが上手く行った場合に社会にどう還元するのか、そこをしっかりと設計していかないと儲かたり儲からなかったりで終わりとなります。未来のビジョンを描くことが非常に重要と思いました。SYMBIOGENESISはホルダーやプレイヤーとともに協創するIPとするというビジョンを掲げています。そこにブロックチェーンというWeb3を代表する技術を使っていこう。という考え方をしています。その作っていく過程をみんなで楽しみたいと思っています。この作品自体だけでなく、IPになっていく過程もエンターテイメントになると思います。

それが唯一無二の体験になり、それがブロックチェーンに刻まれていくのではないでしょうか。

AMA(Ask Me Anything)についてお話します。

ツイッターやディスコードでリアルタイムに音声で質疑応答を行うとき、その場で答えたり持ち帰ったりすると思いますが、私は全てその場で答えるようにしています。

よく聞かれるのは、プロジェクトメンバーの経験、なぜWeb3市場にに参入したのか、マーケティングについて、このプロジェクトが5年後に儲かったらどうなりますかなど。

サービスの未来や考え方などは、しっかりと議論をしていないとAMAで答えられません。その質問には答えらない、持ち帰りますとなると信頼されません。グローバルを目指す場合、各国で人の考え方や文化が違うので、打ち出すメッセージはぶれてしまってはいけません。

どういうことを考え、どのような未来をつくっていくのか という思いは非常に重要と感じています。なのでビジョンをすごく考え議論してきたのは良かったと思っています。

クローズドイベント「Web3.0 Business Initiative Lab | 2023/06」の開催報告はこちら